インターネットの普及に伴い、教育分野でもデジタル化が進み、オンライン研修やeラーニングの重要性が高まっています。特にLMS(Learning Management System)と呼ばれる学習管理システムを活用したeラーニングは、多くの企業で取り入れられています。
しかし、オンライン研修やeラーニングとの具体的な違いや、LMSの選定方法について疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。本記事では、LMSとその他の教育システムの違いや機能、メリット、システム選定のポイントについて解説します。
目次
LMS(学習管理システム)とは
LMS(Learning Management System、学習管理システム)は、デジタル教育コンテンツの作成、管理、配布、追跡を行うためのオンラインプラットフォームです。LMSを使用することで、オンラインを通じて学習環境を提供できるだけでなく、リアルタイムに学習状況や受講履歴、学習成績管理を行えます。
通常、LMSは柔軟なカスタマイズが可能であり、学習者一人ひとりの多様な教育ニーズに対応できるため、教育の効率化と品質向上に貢献します。近年では導入が広がっており、企業、教育機関、政府機関など、多くの組織で採用されています。
LMS(学習管理システム)とeラーニングとの違い
LMS(Learning Management System)とeラーニングの主な違いは、役割と機能性にあります。eラーニングは、主にインターネットを介して提供されるプラットフォームで、学習コンテンツの配信に重点を置いています。
一方、LMSはeラーニングコンテンツを管理し、配信するための仕組みを指します。LMSは、学習教材やコース・講座の作成、学習進捗の追跡、評価の実施など、学習過程全体をサポートし、管理する役割があります。
つまり、eラーニングは「学習コンテンツを配信するためのシステム」であり、LMSは「学習コンテンツの作成・配信・管理を一元管理するシステム」であるといえるでしょう。
eラーニングについて詳しく知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
どうやって作ればいいの?効果的なeラーニングコンテンツの作り方
LMS(学習管理システム)とオンライン研修との違い
LMSとオンライン研修の違いは、範囲と機能面にあります。オンライン研修は特定の知識やスキルに関する教育プログラムそのものを指し、通常、ビデオ講義やオンラインクイズ、討論フォーラムなどが含まれます。
一方のLMSは、オンライン研修を一元管理するためのプラットフォームです。LMSを使用することで、複数のオンライン研修プログラムを一箇所に集約し、学習者の進捗を追跡して、効果的な学習経験を提供することが可能です。
オンライン研修や集合研修について詳しく知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
オンライン研修とeラーニングの違いとは?研修効果を高める方法3選を紹介
集合研修とeラーニングのメリットや効果を最大化するポイントを解説
LMS(学習管理システム)が必要とされている理由
LMSが必要とされる理由は、効率性や柔軟性の高さにあります。
前述のように、LMSはオンラインを通じて教育コンテンツを提供するため、どこからでもアクセス可能な学習環境を提供できます。これにより、時間や場所に縛られずに柔軟に学習が可能になる点は魅力的です。
また、LMSには学習者の進捗管理、評価、フィードバックといった管理機能が備わっているため、管理者側の業務効率を高められるというメリットもあります。
さらに、LMSは、教育者が配信中の教育コンテンツをこまめに更新して必要に応じてカスタマイズすることも容易であり、常に最新の学習プログラムを提供できます。
LMS(学習管理システム)の主な機能
LMS(学習管理システム)には、主な機能として次のようなものが搭載されています。
・受講者機能
・管理機能
・指導機能
・教材管理機能
ここでは、4つの機能を具体的に紹介します。
受講者機能
LMSの受講者機能は、個々の学習者に対してパーソナライズされた学習体験を提供する機能です。この機能により、学習者は自身の進捗状況や学習結果を追跡し、参加中の学習コースに容易にアクセスし、試験や教育コンテンツを完了できます。
また、受講者機能によって自身の過去の学習データを確認し、達成した成果や取得した証明書を閲覧することも可能です。
多くのLMSでは、学習者自身の好みや学習速度に合わせて学習プログラムをカスタマイズできるオプションが用意されています。
管理機能
LMSの管理機能は、教育者や管理者がコースの設計、実施、監視を行うための機能です。この機能を通じて、管理者は学習者の登録、進捗の追跡、成績の管理などを一元的に実施できます。
また、教育コンテンツの配布やアップデート、評価基準の設定なども管理機能に含まれます。さらに、管理者はLMSのレポート機能を利用して、配信中の教育コンテンツの効果を測定・分析し、必要に応じて改善策を講じることができます。
指導機能
LMSの指導機能は、教育者が学習者を効果的にサポートし、指導するためのツールを提供します。この機能には、オンラインを通じた直接的なフィードバックの提供や、掲示板・チャットを通じた学習者とのコミュニケーション、個別指導や追加サポートの提供などが含まれます。
また、指導機能を用いて、個別の学習者やグループに対してカスタマイズされた学習活動や課題を設定することも可能です。教育者と学習者の相互コミュニケーションにより、学習者の理解を深め、より成果の高い学習を支援します。
教材管理機能
LMSの教材管理機能は、研修担当者や教育担当者が教育コンテンツの作成、編集、配布を行うためのツールです。テキストや動画、音声、クイズ、テスト、アンケートなど、多様なフォーマットの教材を効率的に管理できます。また、教材を定期的にアップデートし、学習者に最新の情報を提供することも可能です。
教材管理機能は、教育コンテンツの品質を保ちつつ、学習者にとって魅力的で関連性の高い教材・授業を提供するために不可欠です。
LMS(学習管理システム)がもたらす3つのメリット
LMS(学習管理システム)には、教育効果を高め、管理者の負担を軽減するメリットがあります。また、教育コストを抑えられるのも魅力のひとつです。ここでは、LMS(学習管理システム)の3つのメリットについて解説します。
学習者の教育効果が高まる
LMS(学習管理システム)の活用によって、教育効果を大幅に高めることが可能です。
前述のように、LMSは学習者に合わせたカスタマイズ可能な学習経験を提供し、個々のニーズに応じた教育コンテンツへのアクセスを容易にします。
また、インタラクティブな学習ツールやリアルタイムのフィードバック機能を通じて、学習者のモチベーションや理解度を深め、学習の効率を向上させます。
さらに、学習進捗の追跡や成績評価機能により、学習者の成果を具体的に測定し、必要に応じて教育プログラムを調整できます。このようにLMSは、教育の質を向上させ、学習者の習得レベルを最大化するためのサポートに長けています。
管理者の負担軽減につながる
LMSの導入によって学習プログラムの設計、実施、評価を効率化し、管理者の負担軽減を図れます。
例えば、学習者の登録管理、教育コンテンツの配信、進捗の追跡などを自動化し、管理者の業務にかかる手間を削減できます。
また、LMSはリアルタイムのレポートを出力できるため、管理者は配信中の教育コンテンツの効果を評価し、必要に応じて速やかに改善策を実施できます。
下記の記事では、業務標準化、属人化、仕組化についてそれぞれ解説しています。
業務標準化の効果的な進め方とは?メリット・デメリットも詳しく解説
属人化とは?発生する原因や解消のための3つの手順を解説
仕組み化とは?成功のための4ステップやムダの定義を解説
教育コストを削減できる
LMSを利用することで、教育コストの削減にもつながります。
LMSを通して教育コンテンツを配信することで、物理的な教材や施設の必要性を減らし、印刷や物流にかかるコストを削減します。また、学習プログラムのデジタル化により、教材の更新や再配布に要するコストも削減可能です。
加えて、LMSによる教育の自動化・効率化は、教育者や管理者の労働時間を削減して長期的な人件費の削減にも貢献します。
下記の記事では、人材育成を効率化するコツについて解説しています。
内部リンク:人材育成 効率化
LMS(学習管理システム)の種類
LMS(学習管理システム)には、オンプレミス型、クラウド型、特化型、統合型の主に4つの種類があります。導入を検討する際は、自社に適しているのがどのタイプなのかを見極めることが重要です。
ここでは、4つのLMSの種類について詳しく解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型のLMSは、自社でサーバーを構築して、そのサーバー内でシステムを運用する形式です。
オンプレミス型のLMSは、自由度の高いカスタマイズが可能な点が最大の特徴です。また、サーバーを他社と共有しないため、高度なセキュリティを確保しやすい点もメリットのひとつです。
一方で、ハードウェアの購入やシステムのメンテナンス、アップデートの管理など、運用に関するコストや労力がかかる点はデメリットです。安定的な運用を継続するためには、専門的なサーバー知識を持った人材が必要です。
クラウド型
クラウド型のLMSは、インターネット経由で提供されるLMSサービスを利用する形式です。
クラウド型のLMSは、自社でサーバーを設置する必要がなく、メンテナンスが不要な点がメリットです。既に完成済みのシステムを利用するため、導入開始までの期間が短く、オンプレミス型に比べて低コストで利用できる点が魅力です。
一方で、インターネット接続が不安定な場所では利用できなかったり、サービスを提供する事業者の信頼性が低いとセキュリティに不安が残りやすかったりする点は十分に考慮する必要があります。
特化型
特化型LMSは、特定の教育ニーズや業界に特化した機能を提供するためのシステムです。
専門性の高い研修プログラムの作成ツールやコンテンツ管理機能を備えていることから、通常のLMSでは機能が不足する場合に最適です。
特定の分野の専門的な知識やスキルを提供することに焦点を当てており、業界特有の要件に合わせて設計されているため、一般的なLMSよりも効率的な学習経験を提供します。
統合型
統合型LMSは、さまざまな教育ツールやサービスをひとつのプラットフォームに統合しているタイプのLMSです。コース管理、学習進捗追跡、コミュニケーションツール、評価システムなど、教育コンテンツの提供に必要なあらゆる機能を一元的に提供しているのが特徴です。
統合型LMSの利点は、一連の教育プロセスをひとつのプラットフォームで一元管理できる点にあります。これにより、教育者と学習者は複数のシステムを切り替えることなく、一貫した学習を提供・体験できます。
LMS(学習管理システム)を選ぶポイント
LMS(学習管理システム)を選ぶ際は、自社の導入目的をよく検討しつつ、マルチデバイスへの対応や自社教材の作成に対応しているかを確認することが大切です。また、SCORM規格への対応や人事システムとの連携、サポート体制の充実度もチェックが必要です。
ここでは、5つの観点からLMS(学習管理システム)の選定ポイントを解説します。
デバイスの互換性を確認する
LMSを選ぶ際に重要なポイントのひとつは、マルチデバイス対応の有無です。
マルチデバイス対応のLMSでは、どのデバイスからでも学習中のプログラムの進捗を追跡し、学習資料にアクセスし、コミュニケーションを取ることが可能です。
現代の学習者はスマートフォン、タブレット、デスクトップなど、複数のデバイスを使い分けて学習を行います。したがって、異なるデバイス間でシームレスに利用でき、操作性の高いLMSは、学習者にとって大きな利便性をもたらします。
教材作成機能が充実しているものを選ぶ
自社教材の作成機能は、LMSを選定する際の重要な要素です。
組織や企業によっては、特有のニーズや教育目標に合わせたカスタム教材が必要になることがあります。自社教材の作成機能があるLMSでは、教育者は自社のブランドや文化に合わせたオリジナル教材を作成し、提供することができます。
これにより、教材が持つ学習効果をさらに高めて、効果的な学習を実現します。
SCORM規格へ準拠しているかを確認する
SCORM(Sharable Content Object Reference Model)規格への対応は、LMS選択時に考慮しておきたいポイントのひとつです。
SCORM規格とは、eラーニングをはじめとしたオンライン学習コンテンツを共通化するための国際標準です。SCORM対応のLMSでは、さまざまな学習プラットフォームで配信している教育コンテンツを統合し、効果的に管理できます。
例えばあるeラーニングで自社の研修プログラムを配信しているとき、新たにLMSを導入したとしても、eラーニングで配信中のコンテンツをLMSに流用して登録することが可能になります。
人事システムとの連携を考慮する
導入後にLMSと人事システムとの連携が可能かどうかも、事前に必ず確認しておきましょう。
特に大企業や成長中の組織では、一人ひとりの学習成果をアナログで管理することは難しいため、社内のLMSと人事管理システムを連携させることで学習進捗とキャリア開発を効率的に管理することが重要です。
例えば、LMSを利用すると従業員の研修への取り組みの成果を人事評価に反映させることが可能になり、人材開発と組織の目標達成をより効果的に進められます。
サポート体制が充実している事業者を選ぶ
LMSの導入と運用において、充実したサポート体制が用意されているかどうかは重要です。
特に技術的なトラブルや操作に関する疑問が生じた際、迅速かつ専門的なサポートを受けることができるかどうかは、LMSの利用効率と満足度に大きく影響します。
複数のベンダーを比較し、サポート体制が整っているLMSを選択することで、問題が起きたときでも迅速に解決し、悪影響を最小限に抑えることが可能になります。
LMSを活用して効率的な学習環境を提供しよう
LMSの活用により、学習者は時間や距離の制約を受けずに学習を効率よく進めることが可能になります。管理者側にとっても、学習者の成果を一元管理できるLMSは有効なシステムです。
LMS向けの教材を制作する際は、双方向性の高い動画を用意することをおすすめします。
学習者
直観的な理解の促進:動画教材は、実際の操作やプロセスを視覚的に示すことで、情報を直感的に理解するのに役立ちます。視覚に訴えることで、学習者は複雑な概念や手順も素早く把握できます。
自己主導の学習環境:動画の柔軟なアクセス性は、学習者の自律的な学びを助けます。任意の時間に何度も視聴できるため、理解度に合わせて学習を進めることが可能です。
管理者
教育プロセスの簡素化:動画を用いることで、教育プログラムの作成と管理が簡略化されます。効果的な視覚コンテンツの再利用により、教材の準備時間が短縮され、管理労力が軽減することが可能です。
学習進捗の明確な追跡:動画を通じて、学習者の学習履歴や受講状況を効率的に追跡できます。これにより、管理者は教育プログラムの効果をリアルタイムで評価・可視化できるため、必要に応じて迅速な調整が可能です。
会社全体
教育コストの削減:動画配信は、教育関連のコスト削減にも貢献します。オンライン配信により、印刷物や物理的な配布の必要がなくなるため、コスト効率が向上します。
従業員のスキル強化と効率化:動画を活用することで、従業員は必要なスキルを効果的に習得し、仕事の効率が向上します。これにより、組織全体のパフォーマンスと生産性が高まります。
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