映像や音楽、文章などさまざまな要素を使って情報を伝えられるマニュアル動画は、視聴者の視覚的な理解を促すことができます。何度も繰り返し再生が可能で、コスト削減にもつながる動画マニュアルは、社内向けのマニュアルや顧客向けの製品マニュアルとして、多くの現場で活用されています。
本記事では、マニュアル動画作成のメリットとデメリット、作成ステップなど、マニュアル動画にまつわるさまざまな知識を解説します。
目次
動画マニュアルのメリット
動画マニュアルのメリットとして、情報を視覚的に理解できることや何度も繰り返し再生できること、コスト削減につながることなどが挙げられます。ここでは、動画マニュアルの3つのメリットを詳しく解説します。
情報を視覚的に理解できる
動画マニュアルを活用することで、情報を視覚的に理解できるというメリットがあります。テキストや図だけで手順が解説されているマニュアルよりも、映像で視覚的に手順を説明する方が、理解度が高まりやすくなります。
例えば新たに導入したソフトウェアの使い方を解説する際に、テキストによるマニュアルの場合は、入力例のキャプチャなどを掲載するのが一般的です。しかし、マニュアル動画なら実際に入力している姿を見せながら手順を解説できるため、使い方のイメージをより詳細に伝えられます。
何度も繰り返し再生できる
動画マニュアルは何度も繰り返し再生できるため、視聴者のペースで理解できるまで好きなタイミングで視聴できる点もメリットです。
集合研修などでは、使い方を聞けるのは基本的に一度だけなので、その場で覚えられなければ後から聞き直すことはできません。その場では理解していても、後から手順を忘れてしまい、あらためて確認しようと思ったときに、有効な手段がありません。
しかし、動画マニュアルを用意しておけば、使い方が分からなくなったときにいつでも手順を確認することができます。
コスト削減につながる
マニュアル動画を作成することで、コスト削減につながるというメリットもあります。紙でマニュアルを作成した場合、印刷するコストがかかります。
部門全体で1部だけ印刷するような運用方法なら、それほどコストはかからないでしょう。しかし、部門に所属する全員に1部ずつ印刷する必要がある場合は、用紙の調達コストと印刷コストが膨らみます。
その点、マニュアル動画ならどれだけ多くの人が視聴しても印刷コストは発生しません。
動画の活用方法は下記の記事でさらに詳しく解説しています。
動画はどのような場面で活用できる?メリットや活用事例を紹介
動画マニュアルのデメリット
動画マニュアルには多くのメリットがある反面、情報を詰め込みすぎることで分かりにくくなったり、動画編集の知識やスキルが必要になったりといったデメリットがあります。また、撮影機材やソフトを用意するには、初期コストがかかります。
情報を詰め込みすぎると分かりにくくなる可能性がある
動画マニュアルは視覚的に情報を伝えられる点にメリットがありますが、情報を詰め込みすぎると、かえって分かりにくくなる可能性があります。短い時間の中で必要な情報を適切に伝えるためには、情報を取捨選択し、ポイントを絞り込んで盛り込むことが大切です。
数分の短い時間で大量の情報を視聴者に伝えられることは、動画のメリットのひとつでもあります。デメリットではなくメリットを引き出せるように、構成を十分に考えて動画を作成しましょう。
動画編集の知識・スキルが必要になる
動画マニュアルを作成するためには、動画編集の知識やスキルが必要になります。紙のマニュアルであればExcelやWordなどを使える人なら誰でも作成できますが、動画編集は慣れが必要になるため、初めて取り組む人は少し時間がかかる可能性もあるでしょう。
マニュアルの作成は通常業務と並行して行うのが一般的であり、担当業務をこなしながら動画作成の知識やスキルを1から学ぶのは負担が大きくなりがちです。場合によっては外注を利用するなど、負担を軽減するための方法も検討することが大切です。
撮影機材やソフトなどの初期コストがかかる
動画マニュアルを作成するためには、動画撮影用の機材や編集用のソフトを用意する必要があります。これから新たに動画編集を始めるのであれば、機材やソフトなどの初期コストがかかる点をデメリットに感じる人もいるでしょう。
中には無料の動画ソフトや安価に使える動画ソフトなどもあるので、予算に合わせてコストを抑えるように工夫しましょう。それほど複雑な編集は必要なく、テキストや音声を追加する程度であれば、スマホで動画の撮影から編集までを完結させられるソフトも選べます。
動画マニュアルの作成ステップ
動画マニュアルの作成ステップは、次の通りです。
1.全体の構成を考える
2.台本を書く
3.動画を撮影する
4.ナレーションを録音する
5.動画編集を行う
ここでは、上記の5つのステップについて詳しく解説します。これから動画マニュアルの作成に挑戦する方は、ぜひ参考にしてください。
1.全体の構成を考える
まずはどのようなマニュアルを作成するのかを決めるとともに、マニュアルを使用するターゲットを設定します。「どの製品のマニュアルを、誰が使うのか」を明確にすることで、構成を作成しやすくなります。
作成するマニュアルとターゲットを設定したら、動画マニュアルの全体の構成を考えます。構成は動画全体の枠組みのような役割を持ち、流れを決定づける重要な要素です。構成がしっかりしていないと、冗長で退屈な動画になりがちです。
構成を作成する際は、ターゲットが求めている情報を盛り込みながら、起承転結がしっかりした流れに仕上げることが大切です。
マニュアルの概要や作成方法は下記の記事でさらに詳しく解説しています。
マニュアル作成の方法とは?流れやポイントを詳しく解説
2.台本を書く
全体の構成ができたら、具体的に台本を書いていきます。誰がどのタイミングでどのように動き、どんな内容を話すのかをあらかじめ決めておくことで、撮影をスムーズに進められます。
台本がない状態で撮影を開始すると、撮り直しが発生して工数が膨らんだり、必要な映像を撮りきれずに、編集に移行してから再撮影が必要になってしまったりする可能性があるため注意が必要です。
台本の形式は特に決まっていないため、文章や絵コンテなど、作成する人が得意な形で作成すると良いでしょう。台本ができたら、実際の撮影に進みます。
3.動画を撮影する
台本の作成後は、台本の内容に沿って具体的に撮影を進めていきます。撮影機材が手元にない場合は、撮影日までにカメラをはじめとした撮影機材を用意しておく必要があります。
また、どこで撮影するのかも、動画の品質を左右する重要な要素のひとつです。台本に基づいて撮影日までに撮影場所を確保しておき、当日落ち着いて撮影に臨める環境を整えましょう。
動画を撮影する際は、さまざまなアングルで撮影することが重要です。アングルによって視聴者に与える印象は大きく異なるため、編集の際に理想の演出を実現できるように、できるだけ多くの素材を用意することがポイントです。
4.ナレーションを録音する
動画の撮影が終わったら、必要に応じてナレーションの録音を行います。ナレーションが不要な場合は、この項をスキップして「5.動画編集を行う」に移って構いません。
ナレーションの録音を行う際は、ナレーターを担当する人と事前に動画の内容や雰囲気を共有しておきましょう。ナレーションによって動画全体の雰囲気も大きく変わってくるためです。「楽しい雰囲気で」「真面目な雰囲気で」などの指示をしておくことで、当日スムーズに収録を始められます。
ナレーションを収録する場合は、カメラの他にマイクも必要になるため、収録日までに用意しておきましょう。
5.動画編集を行う
動画撮影とナレーションの収録を終えたら、いよいよ動画編集です。動画編集とは、字幕の挿入や音楽の追加、効果音の設定、不要なシーンのカットなどを行う作業のことです。
動画マニュアルを作成する際は、音声を聴けない環境で視聴する人の利便性を考慮して、字幕は必ず付けることをおすすめします。移動中の電車の中や、周囲が静かなオフィスなどでも視聴できるため、親切な印象を与えられます。
音楽や効果音は、映像を引き立たせるものを選びましょう。最近では無料で使用できる素材などもあるので、予算に合わせて適切なものを選択することが重要です。
マニュアルの運用方法や整理の方法は下記の記事でさらに詳しく解説しています。
業務標準化を叶えるマニュアルの運用ルールとは?6つのコツを解説
作成したマニュアルの整理方法や運用時のポイントを徹底解説
動画マニュアルを作成する際のポイント・注意点
動画マニュアルを作成する際は、動画のテーマを精査するとともに、見栄えよりも分かりやすさを重視しましょう。また、閲覧環境に左右されない動画を意識したり、テロップを有効活用したりしながら、短く簡潔な動画に仕上げることも大切です。
動画のテーマを精査する
動画マニュアルを作成するときは、動画のテーマを十分に精査することが品質を高めるためのポイントです。いきなりマニュアルの作成を始めるのではなく、自社の現状課題を分析し、作成する動画の内容を吟味することが重要になります。
例えば「顧客から紙の説明書が分かりにくいという意見が多く届いており、動画で具体的な使い方を説明したい」など、動画のテーマを精査することで、動画マニュアルの具体的な方向性を定めやすくなります。
見栄えより分かりやすさを重視する
動画マニュアルは、製品やサービスの使い方を説明する目的で作成するものです。そのため、映像の見栄えを追い求めるよりも、分かりやすさを重視することが求められます。必要な情報を盛り込みつつシンプルな内容を心がけ、テキストや図だけでは説明しきれない部分を分かりやすく伝えるように意識しましょう。
動画なら、アニメーションやナレーションなどさまざまな方法で視聴者の理解を助けるための編集が可能です。複数の手段をうまく活用して、分かりやすい動画を作成しましょう。
閲覧環境に左右されない動画を意識する
視聴者は、作成した自社の動画を多種多様な環境で閲覧する可能性があります。したがって、パソコンやスマホ、タブレット、スクリーンなど、閲覧環境によって左右されない動画の作成を意識することが求められます。
パソコンで視聴したときには気にならなくても、字幕が小さいとスマホでは視認性が下がります。そのため、文字サイズは大きめに設定することをおすすめします。また、スクリーンで動画を視聴すると画質が低下して細かい部分が見えにくくなる点にも配慮する必要があります。
テロップを有効活用する
動画には必ずテロップを付けて、分かりやすさを高めましょう。音声だけだと聞き取りにくかったり、音を出せない環境で視聴すると内容を理解できなかったりする可能性があるためです。
ただし、話している内容が多い場合は、すべての台詞を字幕にすると映像を視聴するのが大変になります。字幕を付けるポイントを厳選し、要所だけに留める工夫が必要です。一般的に、1分間に話せる文字数は180文字程度だと言われているため、構成を作る際の参考にすると良いでしょう。
短く簡潔な動画に仕上げる
動画マニュアルは短く簡潔な動画に仕上げて、必要以上に長くしないことが大切です。具体的な時間としては、1本の動画につき5分程度が目安となります。マニュアルが複雑かつ長くなる場合は、複数本の動画に分けて作成しましょう。
すべての工程を1本の動画にまとめると、目的の箇所を探しにくくなり、利便性が低下します。また、長い動画ほど情報を詰め込みすぎて、重要なポイントの印象が薄くなりやすいというデメリットがあります。
動画マニュアルを作成できる無料ソフト
動画マニュアルを作成する際は、動画編集ソフトが欠かせません。しかし、ソフトを購入する予算をできるだけ抑えたいという方も多いでしょう。そこで、動画マニュアルを作成できる3つの無料ソフトを紹介します。
PowerPoint
PowerPointは日常業務で導入している企業も多いため、コストをかけずに動画マニュアルを作成する際に役立ちます。動画を作成したいスライドを準備して、スライドショーの録画設定を行い、プレゼンテーションをしながら録画することで、保存したデータを動画マニュアルとして活用できます。
PowerPointはアニメーションの設定なども可能なので、動きのあるマニュアル動画も十分に作成可能です。
パワーポイントでのマニュアル動画の作成方法やマニュアルのテンプレートについては下記の記事でさらに詳しく解説しています。
パワーポイントでマニュアル動画を作成するメリットと実際の作り方を徹底解説
マニュアル作成にはテンプレートを活用しよう!選定方法も併せて解説
iMovie
iMovieは、Apple製品に搭載されている動画編集ソフトです。Macを利用している人は、iMovieで動画マニュアルを作成することができます。
「ムービー」「マジックムービー」「ストーリーボード」など、編集の種類が多いのも特徴のひとつです。自由度の高い編集だけでなく、ある程度自動で動画を作成することも可能で、分割やエフェクトにも対応しているため、思い通りの動画を作成しやすいソフトといえるでしょう。
Microsoft フォトビデオエディター
Windowsを使用している人は、Microsoft フォトビデオエディターを活用できます。字幕の追加やトリミングなどの基本的な編集作業はもちろん、アニメーションやフィルター、3D効果の追加も可能です。
音楽の挿入で動画の雰囲気をがらりと変えたり、再生速度を調整したりする編集も可能なので、自由度が高く、凝った演出の動画を作成できます。エフェクトの種類も豊富なので、こだわった動画を作りたいときにおすすめです。
無料と有料どっちがいい?
コストを抑えるために無料のソフトを使いたいと考える人も多いでしょう。しかし、企業で使用する動画ソフトは、有料ソフトを選ぶことをおすすめします。
無料ソフトでも、字幕の挿入や音楽の挿入など、基本的な動画編集は可能です。しかし、収録したナレーションを挿入する機能やテロップの日本語を自動的に多言語に翻訳する機能は、無料ソフトには備わっていないケースが多いといえます。
理想通りの編集を行い、クオリティの高い動画マニュアルを提供するためには、豊富な機能が備わった有料ソフトの導入が近道になります。
PIP-Makerなら、PowerPointを変更するだけで簡単に動画マニュアルを作成できます。これから動画マニュアルの作成を検討しているなら、ぜひPIP-Makerの導入をご検討ください。
マニュアルの外注については下記でさらに詳しく解説しています。
マニュアル制作を外注するメリット・デメリットや費用相場を解説!
まとめ
動画マニュアルには、情報を視覚的に理解できる、何度も繰り返し再生できる、コストを削減できるといったメリットがあります。分かりやすさを重視したマニュアルを提供したいなら、動画マニュアルの作成は有効な選択肢といえるでしょう。
動画マニュアルを作成する際は、動画のテーマを精査し、見栄えよりも分かりやすさを重視した内容を意識することが大切です。テロップの追加や、閲覧環境に配慮した編集にも注意して、視聴者に情報が伝わりやすい動画を作成しましょう。
とはいえ、実際にマニュアルを動画で作成しようとすると、多くの手間と時間がかかります。しかし、PIP-Makerなら、既存のPowerPointをアップロードするだけで簡単に動画マニュアルを作成できます。これから動画マニュアルの作成を検討しているなら、ぜひPIP-Makerの導入をご検討ください。