
業務標準化には、業務効率化や業務品質の向上、より重要性の高い業務へのリソース転換など、さまざまなメリットがあります。これから業務標準化を進めるにあたって、どのようなポイントを押さえておくべきか知りたいという方も多いのではないでしょうか。
業務標準化を進める際は、いくつかの手順を把握し、計画的に進めていくことが重要です。本記事では、業務標準化の効率的な進め方や業務効率化との違い、具体的なメリットやデメリットについて詳しく解説します。
目次
業務標準化とは・業務効率化との違い
業務標準化と業務効率化は一見すると似た言葉のように思えますが、実際には意味合いが少し異なります。業務標準化と業務効率化の違いは、以下の通りです。
・業務標準化
全従業員が業務で同じ成果を出せるようにすること
・業務効率化
無理や無駄をなくし、より少ない労力で同じ成果を出せるようにすること
双方の違いについてさらに詳しく見ていきましょう。
業務標準化とは
業務標準化とは、全ての従業員が業務で同じ成果を挙げられるようにするための施策のことです。「全ての従業員」とは、国内だけでなく海外の拠点で働く従業員であり、正社員・アルバイト・パートなどを含めたあらゆる従業員のことを指しています。
業務を標準化することで、ある業務に対して誰でも同じ成果を挙げられるようになり、組織全体の業務品質の向上につながります。また、担当者だけに業務負担が偏る「属人化」の解消を図り、働きやすい現場づくりも実現できます。
業務効率化とは
業務効率化とは、業務を処理するうえで発生する無理や無駄をなくして、より少ない労力で同じ成果を出せるようにすることです。
日々当たり前のように処理している業務でも、あらためて見直してみると、不要な手順があったり、さらに効率的に処理できる方法が見つかったりすることは多々あります。
昔から同じ業務を処理していると、慣れがあるために自分が処理している手順が最善だと思い込んでしまいがちですが、定期的に振り返って効率化できる部分がないかどうか再検討することは重要です。
業務効率化を図ることで、リソースに余裕ができて他の業務に回せるようになったり、従業員の業務負担を軽減したりすることにつながります。
業務標準化を行う重要性
業務標準化を行う重要性としてよく挙げられる要素として、急な異動や休職への対応や、業務品質の統一化、作業量の均一化などがあります。ここでは、業務標準化が求められる3つの重要な理由について解説します。
急な異動・休職に対応するため
業務標準化を行うことで、従業員の急な異動や休職に対応しやすくなります。
業務標準化が進んでおらず、属人化が深刻化した現場では、担当者だけが業務の手順を認識している例が少なくありません。そのため、急な異動や休職に伴って引き継ぎの時間を十分に確保できないまま現場を後にすると、部門内の他の従業員が処理の手順を知らず、業務が滞留したり大幅に遅延したりするおそれがあります。
マニュアルを作成しておくなどの方法であらかじめ業務が標準化されていれば、急な異動や休職があっても他の従業員が代理で対応でき、スムーズに後任の担当者へ引き継ぎできます。
品質を統一するため
業務標準化は、組織内の業務品質を統一する効果も期待できます。
一般的な組織には、経験豊富なベテラン社員と、まだそれほど経験を積んでいない社員の両方が在籍しています。そのため、ベテラン社員と経験が不十分な社員では、同じ業務を処理したときにかかる時間や、品質には差が出やすくなります。
業務標準化を図ることで、決められた手順に沿って処理するだけで誰でも同じ成果を挙げられるようになるため、業務品質の統一化につながります。他部門から異動してきたばかりの従業員や、採用したばかりの従業員でも即戦力として活躍が期待できます。
作業量が偏らないようにするため
業務標準化を図り、誰でも同じ成果を出せるようになれば、特定の従業員にのみ作業量が偏る状況を回避しやすくなります。
「この業務は〇〇さんしか分からない」という状況を作り出してしまうと、担当者が外出していたり休暇を取っていたりする場合でも、連絡を取らなければ業務を進められなくなるおそれがあります。このような対応が積み重なると、作業量の偏りに不満を感じ、従業員満足度の低下を招いて退職につながりかねません。
業務標準化によって従業員ごとの作業量の偏りを是正し、平等な業務量の調整が容易になります。
業務標準化を行うメリット
業務標準化を行うメリットとして、主に次の5点が考えられます。
・生産性の向上
・品質の向上
・成果目標の明確化
・より業務に専念することが可能
・従業員の負担軽減
ここでは、5つのメリットについて詳しく解説します。
生産性の向上
業務標準化には、生産性を向上させるというメリットがあります。生産性向上とは、「より少ない労力で、大きな成果を生み出すこと」を意味します。
業務標準化によって全ての従業員が同じ成果を出せるようになることで、これまでは特定の業務を処理するために長い時間がかかっていた従業員でも、短い時間でより大きな成果を出せるようになります。
短い時間で最大の成果を挙げられれば、空いた時間をより重要な業務に割り当てることも可能です。結果的に社内の生産性が大きく向上し、売上や顧客満足度の向上に大きく貢献します。
品質の向上
業務標準化を行うことで、業務品質の向上につながります。これまで個々の従業員がそれぞれのやり方で処理していた業務の手順が統一化され、誰でも同じ成果を出せるようになるためです。
経験豊富なベテラン社員と経験が浅い新入社員のスキル差を埋めることで、より効率的に業務を処理することができます。
成果目標の明確化
業務標準化によって、成果目標の明確化も実現できます。
それぞれの従業員が異なる手順で業務を処理している現場では、「どのような成果を挙げれば目標を達成したと判断できるのか」が曖昧で、統一された成果目標を設定することが難しい状況にあります。
しかし、業務を標準化して誰もが同じ手順で処理するようになれば、成果目標を設定しやすく、従業員全員で目標を共有できます。
より重要な業務に専念することが可能
業務標準化によって一部の既存業務の処理を統一化できれば、業務標準化が難しく、より需要度の高い業務に専念することが可能になります。
人間の判断が必要な業務に多くのリソースを割り当てることで、生産性を高めて、売上アップや顧客満足度の向上などにつながります。
従業員の負担軽減
業務標準化によって、従業員の負担軽減も期待できます。
業務標準化が進んでいない現場では、業務の属人化が深刻化しているケースが多く、担当者の業務負担が重くなりがちです。業務標準化を推し進めて誰でも同じ成果を出せるようになれば、特定の担当者のみに業務が偏ることを防止し、負担の軽減につなげられます。
業務標準化を行うデメリット
業務標準化を行うデメリットとして、業務標準化に向いていない業務があることや、従業員のモチベーション低下につながる可能性があることなどが考えられます。ここでは、2つのデメリットについて解説します。
業務標準化に向いていない業務もある
社内で処理している業務の中には、業務標準化に向いていない業務もあります。業務標準化に不向きなのは「手順が決まっておらず、結果が毎回同じではない業務」です。
例えば、コールセンターにおけるクレーム対応は、顧客からの電話を受けて具体的なクレーム内容を聞き取り、内容に合わせて適切な応対を行う必要があります。毎回同じ応対では顧客の怒りを買い、評価を下げてしまう可能性が高いでしょう。
このように、業務標準化に向いていない業務が中心の組織では、そもそも業務標準化への取り組みをスタートできないことがあります。
従業員のモチベーション低下につながる
業務標準化は業務効率化や業務品質の向上に貢献しますが、従業員のモチベーション低下につながるおそれもあります。
自分でアイデアを出しながら業務を処理するのではなく、マニュアルに沿って常に同じ手順で業務を処理する運用に変化することで、業務に対する面白さが薄れてしまう可能性があるためです。
業務標準化の進め方
業務標準化を進める手順は、一般的に次の通りです。
1.現状の把握と分析
2.標準化を優先すべき業務を決定する
3.標準化の条件を明確化する
4.業務フローの整理
5.業務フローの設計(マニュアル化)
6.トラブル発生時の対応マニュアルを作成
7.一時的に分業し状況を確認
8.PDCAを回して改善
一つひとつの手順をよく確認し、計画的に準備を進めることが求められます。
現状の把握と分析
まずは自社の現状を把握・分析し、どのような業務があるのかを明らかにする必要があります。現行の業務をリストアップして、どういった手順で業務を処理しているのかをまとめてみましょう。このとき、名前を付けにくいような小さな業務も抽出して、抜け漏れがないように分析することが大切です。
そのうえで、それぞれの業務にどのくらいの時間と人手がかかっているのかを算出して、社内全体における各業務の影響度の高さを可視化しましょう。
標準化を優先すべき業務を決定する
現状把握と分析が完了したら、各業務における標準化の優先度を設定していきます。社内全体への影響度の高さを考慮したうえで、業務の標準化を行うとメリットが大きいと考えられる業務から順に標準化していくことをおすすめします。
最終的には全ての業務を標準化することが理想ではありますが、標準化には時間がかかるため、一度に対応を完了するのは難しいと考えられます。そのため、優先度の高い順に処理するのが効率的です。
標準化の条件を明確化する
優先度を設定した後は、標準化の条件を明確化し、最終的なゴールを設定しましょう。
「どのような状態になれば標準化が達成されたと言えるのか?」が明らかになっていないと、漫然と施策を続けてしまい、標準化が不十分なまま取り組みを終えてしまったり、目的が達成されているにもかかわらず続けてしまったりするおそれがあります。
最初に標準化の条件を明確に定義しておくことで、適切なリソース配分ができるだけでなく、従業員にとって目標ができるためモチベーションの維持にもつながります。
業務フローの整理
標準化の条件を明確化できたら、業務フローの整理に移ります。それぞれの業務について、マニュアル化の前にあらためて業務フローを見直し、手順を最適化しましょう。不要な手順を削除したり、より良い手順に変更したりすることで、業務を効率化できます。
業務フローを整理する際は、現場の従業員にもヒアリングを行い、積極的に意見やアイデアを取り入れることが大切です。業務標準化に実際に取り組むのは従業員であることから、現場の意見を取り入れて、活用しやすいマニュアルに仕上げましょう。
業務フローの設計(マニュアル化)
業務フローが固まったら、具体的なマニュアルを設計していきます。マニュアルはテンプレートを活用し、全ての業務で共通のデザインにすることで、管理・改版しやすくなります。
マニュアルの設計時は、読みやすさや知識のない人への分かりやすさなども考慮して、誰にでも伝わりやすい内容を意識しましょう。十分な知識を持った人が作成すると、初心者の視点が抜けるおそれがあるため、第三者にチェックを依頼するのも有効な手段です。
マニュアル作成時のコツやポイントについて知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
マニュアル動画作成のメリットとデメリット、作成ステップを詳しく解説
マニュアル作成にはテンプレートを活用しよう!選定方法も併せて解説
トラブル発生時の対応マニュアルを作成
業務マニュアルの設計と並行して、トラブル発生時の対応マニュアルも作成しておきましょう。業務上トラブルが発生したときに、どのように初動対応を取るのかをまとめたマニュアルが整備されていれば、スムーズにトラブルの解決にあたれます。
初動対応がスムーズであるほど解決までの時間も短くなる傾向にあります。マニュアルがあれば、担当者が不在の場合でも他の従業員が代わりに対応できるため、より速やかな解決につながります。
一時的に分業し状況を確認
マニュアル作成にあたっては、担当部門をあらかじめ決めておき、計画的に作成を進めることが大切です。
マニュアルが完成したら、関連部門で一時的に分業して状況を確認し合いましょう。マニュアルの完成状況を把握するだけでなく、期待通りの品質に仕上がっているかどうかレビューを行うことも求められます。
全てのマニュアルが完成したら、業務標準化に向けて実際にマニュアルの運用を開始します。
PDCAを回して改善
マニュアルの運用を開始した後は、PDCAを回して定期的に効果測定を行い、どのくらい業務標準化が進んでいるかを算出しましょう。
そのうえで、マニュアルの改善点を洗い出して反映し、また効果測定を繰り返すサイクルを回し続けることで、より高品質なマニュアルの運用につながります。
最初に設定したゴールに到達するまで何度も繰り返し、効果を高めることが重要です。
マニュアル運用時に押さえておきたいポイントついて知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
業界標準化を叶えるマニュアルの運用ルールとは?6つのコツを解説
業務標準化の成功ポイント
業務標準化を成功させるポイントとして、目的を共有したうえで、現場の声を反映して改善を図ることが挙げられます。また、必要に応じてITツールを導入すると、より業務標準化を効率的に進められます。
ここでは、3つのポイントについて詳しく解説します。
目的の共有
業務標準化を進める際は、社内全体で目的の共有を徹底しましょう。「なぜ業務標準化を行うのか」が従業員に認識されていないと、メリットが周知されないままデメリットだけが目について、取り組みに反対される可能性があります。
業務標準化によって従業員にもたらされるメリットなどを丁寧に説明したうえで、社内全体が一丸となり、同じ方向を向いて業務標準化に取り組むことが大切です。目的を共有することで、従業員のモチベーションを維持する効果も期待できます。
現場の声を反映し改善を図る
業務標準化への取り組みを進める際は、現場の声を反映して積極的に改善を図りましょう。よくある失敗のひとつに「現場の意見を聞かずに、机上の計算だけで取り組みを進めてしまう」というものがあります。
実際に業務標準化に取り組むのは現場で働く従業員であることから、彼らの声を聞き入れて、時には現場の視察なども実施しつつ、改善を繰り返し続けることが求められます。
ITツールの導入
必要に応じて、社内wikiやグループウェア、マニュアル作成ツールなどのITツールを導入すると、さらに効率的に業務標準化を進められます。
社内wikiやグループウェアは、社内のノウハウ共有や作成したマニュアルの格納先として活用が可能です。マニュアル作成ツールは、その名の通りマニュアルの作成をサポートするためのツールです。複数マニュアルの一括管理やバージョン管理を容易にする効果も期待できるため、大量のマニュアルを作成・管理する場合におすすめです。
ゴールを明確にして計画的な業務標準化を進めよう
業務標準化によって、社内全体の業務効率化の促進を図り、業務品質の向上や従業員の負担軽減も実現できます。
業務標準化を行うことによって、製作者、利用者、会社全体には次のようなメリットがあります。
管理者
・組織内で成果目標を共有しやすくなり、従業員の評価基準が明確になる
・従業員の急な異動や休職にも対応しやすくなり、管理の負担が軽くなる
利用者
・着任したばかりのスキルが浅い従業員でも、ベテランと同じ成果を出せるようになる
・業務の属人化が解消され、ブラックボックス化していた業務が可視化される
会社全体
・社内全体の生産性が向上し、売上アップや顧客満足度アップにつながる
・作業量の均一化や労働負担の軽減を図り、従業員のモチベーションを高められる
業務標準化を実現するためにはいくつかの手順があり、一つひとつの手順を計画的かつ確実に進めていくことが重要になります。必要に応じてITツールの導入も検討しつつ、自社の目的に合った業務標準化を達成しましょう。