デザインを意識したマニュアルを作成することは、マニュアル全体の視認性を高めて使いやすさを向上させるうえで重要です。マニュアルのデザイン性を左右する要素は、余白やフォントの種類・色、図や表など多様であり、一つひとつの要素を意識することで全体のデザインが決定します。
マニュアルをデザインする際は、マニュアルの本来の目的を抑えて、読み手に取って必要な情報を意識して作成することが求められます。本記事では、マニュアル作成におけるデザインの重要性や表紙・目次を作成する際の注意点、マニュアルの本来の目的などについて解説します。
目次
マニュアル作成においてデザインはなぜ重要?
マニュアル作成において、デザインは非常に重要です。視認性の高いデザインに仕上げることで、利用者にとって重要な情報が視覚的に分かりやすくなり、より使いやすいマニュアルに近づくためです。
「誰でも情報を把握しやすいマニュアル」にこだわるのであれば、視認性や余白、フォント、文字の大きさや色などさまざまな要素に注意してデザインを設計しましょう。ここでは、デザインにこだわる際の7つのポイントについて解説します。
視認性を高める
マニュアルのデザインにおいてまず注目したいポイントのひとつは「視認性」です。視認性とは、「目で見たときに確認しやすいかどうか」を表す指標のことを指します。視認性の高いデザインとは、目で見たときに必要な情報をひと目で把握できるデザインであるといえるでしょう。
マニュアルを作成する際に、「内容が充実していること」を意識しすぎるあまり、デザインや視認性を度外視してしまうことがあります。しかし、デザインや視認性を重視していないマニュアルは使いにくく感じられてしまい、現場に浸透しにくくなる可能性が高まります。
利用者から見てすっきりとまとまっている、見やすいマニュアルを作るように心がけましょう。
適度な余白を設ける
適度な余白は、マニュアルの見やすさを高めるポイントです。
例えば1ページの中にぎっしりと文字が詰まっているマニュアルは、どの部分を中心的に見れば良いのかが分かりにくいため、必要な情報をスムーズに取得できません。マニュアルを作成する際は、「とにかく文字を詰め込む」のではなく、「ページ全体に対して適切な情報量を配置する」ことが重要になります。
マニュアルを開いた際に思わず閉じたくなったり、読むのが億劫になったりするような配置にするのではなく、ページ全体の見やすさにこだわり、重要な箇所がすぐに分かるような構成を意識しましょう。
フォントの種類を変える
フォントの種類の選び方も、マニュアルのデザインを引き立たせるうえで重要です。
フォントにはさまざまな種類があり、タイトルに変化を付ける目的で使用したり、本文とは異なる枠組みであることを強調したりするために複数のフォントを配置する設計は有効です。
ページ内の全てのフォントを同じ種類にしてしまうと、どの部分が重要なのかが分かりにくく、ひと目で必要な情報を把握するのが難しくなります。そこで区切りの箇所や特に重要な箇所のフォントを変更することによって、注目してほしい箇所を際立たせることが可能になるのです。
文字の大きさ、色を変える
フォントの選び方と同様に、文字の大きさや色も重要な要素です。タイトルや見出しのフォントを大きくしたり、マニュアルの中で特に重要な部分を赤色で目立たせたりするなどの工夫は、読み手の注目を集める手法として扱いやすいものの代表例といえるでしょう。
ページ全体の中で一部だけ色が変わっている部分があると、読み手は思わずその部分に注目してしまいます。そのため、意識させたい部分に変化を加えることは有効です。
ただし、やみくもに文字の大きさを変化させすぎたり、ページ内の複数箇所で色を変更したりすると、読み手がどこに注目すれば良いのか分からなくなってしまいます。そのため、本当に重要な箇所にのみ変化を付けることが大切です。
似た情報をまとめて配置する
マニュアル内の関連情報は、できるだけ一箇所にまとめると必要な情報を検索しやすくなります。
種類の近い情報があちこちに散らばっていると、読み手が情報を検索する際にあちこちにページを移動しなければならず、使いにくいマニュアルになってしまいます。性質が似ている情報はできるだけ近い場所に配置して、検索性を高めましょう。
どれだけ説明文が分かりやすかったとしても、検索性が低いマニュアルは敬遠されてしまいがちです。必要な情報を得るために長い時間がかかってしまうと、使いにくいマニュアルであると判断されてしまい、だんだんと使われなくなってしまう可能性があります。
関連情報をまとめたうえで、マニュアルの冒頭には目次を配置し、「どのページにどんな情報がまとまっているのか」を分かりやすくすることも効果的です。
図や表を適度に使用する
マニュアルを作る際は、適度に図や表を使用して見やすいマニュアルに仕上げましょう。
ページの中に文字ばかりが詰め込まれているマニュアルは、「文字ばかりで読みづらそうだ」と読み手に感じさせてしまいます。また、図や表が使われていないと全ての情報を文字を読むことで獲得しなければならないため、手軽に情報を得られるマニュアルではなくなります。
書かれている情報に関連する図や表を適切に配置することで、文字の圧迫感が軽減され、読み手にとって取っつきやすいマニュアルになります。また、視覚的に情報を得やすくなるため、マニュアルを活用して必要な情報を得るまでの時間を短縮する効果も期待できます。
文字や図・表の配置を揃える
文字や図、表など、マニュアルに取り入れた要素はできるだけ配置を揃えると、見やすいマニュアルに仕上がります。
例えば段落ごとに文頭が揃っていないマニュアルは、読みにくさを感じさせる原因になります。WordやExcelの「左揃え」「中央揃え」「右揃え」などの設定をうまく活用して、整然としたデザインを意識したマニュアルを作成しましょう。
図や表を複数配置する場合も、端を揃えたり、大きさを同じくらいにしたりすると、視認性が高まります。特定の図だけサイズが大きすぎる、マニュアル内の要素が揃っていないなどの「見にくさ」が積み重なると、使われにくいマニュアルになってしまうおそれがあります。
マニュアルの表紙や目次を作成するときのポイント
マニュアルの表紙や目次を作成する際は、表紙と目次のデザインにも注力する必要があります。
表紙はマニュアルの顔であり、表紙を見ただけでどのような内容なのかが分かりやすいデザインに仕上げることが大切です。また、目次を見るだけで内容を簡単に把握できるようにすることも、使いやすいマニュアルのポイントのひとつです。
ここでは、表紙と目次それぞれの観点から、マニュアルの表紙や目次を作成するときのポイントを解説します。
表紙をデザインするときのポイント
マニュアルの表紙をデザインする際は、「表紙を見ただけで何のマニュアルなのかを判断できる」デザインにすることが重要です。
複数のマニュアルを作成する際に、同じようなデザインの表紙がいくつも並んでいると、中身を開かなければマニュアルの内容を把握できません。しかし表紙に工夫が凝らされていれば、中身を開かなくても内容を確認でき、利用者の手間を削減できます。
このように、表紙のデザインは「内容が分かりやすいかどうか」が重要です。デザインにこだわりすぎて分かりやすさが失われるようなら、無理に図やイラストを使わずに文字のみのデザインでも構いません。
現場によってはマニュアル表紙のデザインがルール化されている場合もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
目次をデザインするときのポイント
目次は「マニュアル全体の構成図」を表す重要な情報源です。そのため、目次のデザインにこだわることも大切です。
マニュアル作成時はまず中身から作り始める、という人も多いかもしれません。しかし、構成図がしっかりしていないと全体の分かりやすさが損なわれる可能性が高いため、まずは目次から完成させることをおすすめします。
目次を丁寧にデザインしておくと、マニュアル全体の流れが分かりやすくなり、必要な情報がどこに配置されているのかをひと目で把握しやすくなります。
マニュアルの本来の目的は2つある
マニュアルの本来の目的は、「マニュアルを活用してあらかじめ設定した効果を得ること」にあります。その効果は業務を効率化することであったり、十分なノウハウを持たない従業員の業務をサポートし、現場全体の成果を底上げすることであったりとさまざまです。
ここでは、「マニュアル活用で達成したいことを決める」と「マニュアルの利用者が求めるものを把握する」の2つの観点から、マニュアルの本来の目的について解説します。
1.マニュアル活用で達成したいことを決める
マニュアルの本来の目的を達成するためには、マニュアルを作成して達成したいことを明らかにする必要があります。
前述のように業務効率化や現場全体の成果底上げを図ることはもちろん、属人化を解消して誰でも業務を処理できるようになることや、従業員の負担を軽減したいなど、さまざまな目的があるでしょう。
そのため、マニュアルを作成し始める前に、「自社がマニュアルを作成する目的は何か」を明確にする必要があります。目的を明確にしたうえで、その目的を達成できるようなマニュアルを作成すると、より高い効果が得られます。
マニュアル運用時の注意点についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
業務標準化の効果的な進め方とは?メリット・デメリットも詳しく解説
業務標準化を叶えるマニュアルの運用ルールとは?6つのコツを解説
2.マニュアルの利用者が求めるものを把握する
マニュアルを作成する際は、マニュアルを通じて利用者が求めていることを適切に提供する必要があります。設定したマニュアルの作成目的を達成するために、利用者に対してどのような情報を提供する必要があるのかを十分に検討したうえで、マニュアル作りをスタートさせましょう。
どれだけ分かりやすい説明だったとしても、利用者が求めていない情報であれば、マニュアルの利用価値は低下してしまいます。「必要な情報を分かりやすく記述すること」を意識すると、マニュアルの価値は向上します。
マニュアルのデザインを考える際の注意点
マニュアルのデザインを考えるうえでの注意点として、デザインにこだわりすぎないことが求められます。また、フォーマットは統一化し、大まかすぎず細かすぎない適切な粒度の内容に仕上げることが大切です。
ここでは、マニュアルのデザインを考えるうえで押さえておきたい3つのポイントについて解説します。
デザインにこだわりすぎない
マニュアルのデザインにこだわりすぎると、かえって必要な情報を確認しにくい内容になってしまう可能性があります。マニュアルのデザインはあくまでも「必要な情報を検索しやすくするため」であることを意識して、必要以上にこだわりすぎないようにしましょう。
本筋には関係のない図やイラストを配置したり、ページ全体をカラフルにしすぎたりすると、本当に必要な情報が埋もれてしまいやすくなります。注目してほしい情報にのみフォント変更やテキストの色変更を行う、図や表の数は必要最低限にとどめるなど、ページ全体を見やすくする工夫が大切です。
全てのマニュアルのフォーマットを統一する
複数のマニュアルを作成するにあたって、フォーマットは統一化することをおすすめします。マニュアルごとにフォーマットが異なると、利用者が情報を得ようとするときに毎回異なる部分に注目しなければならず、使い勝手が大幅に損なわれるためです。
また、作成者にとっても管理がしにくくなり、作成後の改版に手間がかかったり、担当者が変わるとメンテナンスできなくなったりするデメリットがあります。
あらかじめマニュアル用のフォーマットを用意しておき、作成に関わる従業員が容易にアクセスできるような場所に格納しておくと良いでしょう。
フォーマットを統一するためのマニュアルデザインについてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
マニュアル作成にはテンプレートを活用しよう!選定方法も併せて解説
適切な粒度の情報を記載する
マニュアルを作成する際は、「大まかすぎず、細かすぎない情報」を配置することが大切です。利用者が求めている情報の粒度はどの程度なのかを十分に検討したうえで、必要な情報を記載しましょう。
例えば、初心者向けのマニュアルとして作成しているにもかかわらず、ベテランが求めているような細かい注意点を記載しても、初心者には扱いにくいマニュアルになってしまいます。初心者向けのマニュアルとして運用するのであれば、業務をスムーズに処理するためのプロセスを適切に記述したうえで、あまり細かい情報を付け加えすぎないことが求められます。
一方、専門性の高い従業員が使用するマニュアルであれば、基本情報のみが書かれたマニュアルでは不足する場合もあります。「そのマニュアルにとって必要な情報はどれなのか」を適切に判断し、最適な情報を記載することが重要です。
マニュアルを作成する際のコツについて知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
マニュアル作成の方法とは?流れやポイントを詳しく解説
利用者にとって必要な情報を記載した分かりやすいマニュアル作成を意識しよう
マニュアルのデザインにこだわることは、視認性を高め、マニュアルの使いやすさを向上させるうえで重要です。余白やフォントの種類・色、図や表などさまざまな要素を適切に取り入れて、利用者にとって使いやすいマニュアルを作成しましょう。
マニュアルのデザインにこだわると、製作者、利用者、会社全体のそれぞれにとって次のようなメリットがあります。
製作者
・情報がまとまった分かりやすいマニュアルを提供でき、管理や改版がしやすくなる
利用者
・マニュアルから自分に必要な情報を得やすくなり、業務を効率的に進められる
・文字だけのマニュアルに比べて分かりやすさが高まり、短い時間で内容を理解できる
会社全体
・より効果的に業務効率化を促進でき、現場全体にマニュアル活用の意識が浸透する
・マニュアル活用により会社全体の生産性が高まり、コスト削減につながる
とはいえ、1からマニュアルを分かりやすく作成しようとすると、手間も時間もかかります。手軽に分かりやすいマニュアルを作成したいなら、動画マニュアルを活用するのがおすすめです。
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